この記事では、イソ弁がボス弁に確認すべき内容を事務局に質問してきた場合、どのように対応するべきかご紹介しています。
勤務弁護士(アソシエイト弁護士)、通称イソ弁と事務局との関係は、上司と部下でも、先輩と後輩でもない、少し特殊な関係です。
だからこそ、対応に悩むことはありますよね。
イソ弁がボス弁に聞かないといけない質問を、すぐ私に聞いてくるの。
これって私が答えるべきなのかな?
実際に、このような悩みは、他の法律事務所の事務員と話しているとよく出てきます。
そこで今回は、イソ弁がボス弁に確認すべき内容を事務局に質問してきた場合の対処法についてご紹介します。
イソ弁とのコミュニケーションに悩むあなたの参考になれば嬉しいです。
イソ弁がボス弁に確認せず事務局に質問する理由
イソ弁がボス弁に確認すべき内容を、ボス弁に聞かずに事務局に質問する理由は簡単です。
ご想像どおり、聞きやすいからです。
以前、他の法律事務所に勤務する友人のイソ弁に、なぜイソ弁はボス弁に質問するのを避ける人が多いのか聞いたことがあります。
予想通り、イソ弁がボス弁にいきなり質問するのはかなり壁が高いことなのだそうです。
こんなことを聞いたら、ボス弁からの評価が下がるかも
こういう気持ちがあるため、ボス弁に質問するのは最終手段であり、その前に事務局に聞いてわかるのならそれが一番だと考えているようです。
そういう気持ちはわからないでもありませんね。
事務局に置き換えるなら、怖い事務局トップのお局様に聞く前に、他の先輩事務員に聞いてわかるのならその方がいいと考えるのと構造は同じです。
では、気持ちがわかるから、事務局としては、イソ弁から聞かれた質問には全部答えるべきでしょうか。
イソ弁から事務局への質問には2パターンある
イソ弁が事務局に聞いてくる質問は、大きく分けて2パターンあります。
ずばり「事務局で答えられる質問」と「事務局で答えられない質問」です。
当たり前のことを言っていると思われるかもしれませんが、事務局で答えられない質問というのは「答えを知らない質問」と全くの同義ではありません。
もちろん、答えを知らない質問には答えられません。
しかし、中には経験上おおよそ答えはわかっていても、事務局として答えるべきではなく、ボス弁に確認するべき質問があるのです。
事務局で答えられる質問
事務局で答えられる質問は、およそ定型的に決まっている業務や、普段から事務局で担っている業務に関する質問です。
また、一般論として手続きの流れや処理についても答えられるでしょう。
この申請の添付書類ってこれだけ?
原本を出すんだよね?
はい。通常の添付書類はそれだけです。
原本と写しも一部提出しないといけません。
このような質問であれば、普段事務局が担っている業務ですし、一般的な話なので答えられます。
確かに、色々と自分で調べるのもイソ弁の仕事という考えもあるでしょう。
しかし、さすがにこのような質問まで答えないというのは、少々イソ弁が気の毒です。
時間や手間を考えても、事務局が答えるのがベストだと考えます。
事務局で答えられない質問
事務局で答えられる質問と違い、事務局では答えられない・答えるべきではない質問もあります。
それは、個別具体的な法的判断を含む質問です。
この手続きって、AとBの書類、どっちから提出した方がいい?
Aから出すのが基本かな?
Aから出すことが多いですけど、Bを先に出すこともあります。
少し結論が変わってきますから。
この件もAからでいいよね?
いやそれは…
(たぶんAだけど答えられないよ)
このように、一般論から外れて個別具体的な法的判断を含む質問は、経験上おそらくそうだろうと思うことでも、答えるべきではありません。
あくまで私達は事務員だからです。
その類の疑問は、イソ弁自身が弁護士として判断するか、ボス弁護士に判断を仰ぐべきなのです。
ですから、私はこのような質問には答えず、ボス弁護士や裁判所等に確認するように伝え、質問には答えないようにしています。
事務局が質問に答えない時に起こること
イソ弁からの質問に事務局が答えないと、しばしば起こる現象は次の通りです。
それぞれ現象は異なりますが、すべき対処のポイントは「毅然とした対応」です。
イソ弁の仕事が止まってしまう
まず、事務局から回答を得られなかったイソ弁の仕事が止まってしまうことがあります。
イソ弁の中には、なかなかボス弁へ直接確認したり質問することができない人もいて、そうなるとそこで仕事が止まってしまうのです。
ギリギリになって大急ぎで進める羽目になって、事務局も振り回されるのよ…
他の法律事務所の事務員からも、このようなセリフをよく聞きます。
ただ、冷たいようですが、私はこういう場合に積極的にイソ弁のフォローはしません。
イソ弁自身が招いたことが明らかだからです。
マイペースなイソ弁への対応と同じように、基本的に自分の行動が招いた結果は自分で何とかしてもらうことが必要です。
事務局からボス弁へ確認を頼まれる
事務局が質問に答えてくれないとなると、次によく言われるのがこちらです。
スミレさんの方からボス弁に確認しておいてくれない?
イソ弁の自分からは聞きにくいことも、事務局からなら聞きやすいと思ってのことでしょう。
ですが、私はこの依頼も基本的に断ります。
理由は単純で、キリが無いからです。
正直言って、ボス弁への確認がそれ1つしか無いなら、イソ弁の代わりに確認してもいいのです。
しかし、経験の少ないイソ弁にとって、確認することがこの1つで済むはずがありません。
1つ確認すれば2つ目の確認事項が出てきて、それは3つ目、4つ目と続きます。
そうなると、延々、イソ弁とボス弁の間を行ったり来たり、終わりのない伝言ゲームに付き合わされる羽目になります。
ですから、イソ弁には直接自分でボス弁に確認するように勧めます。
その方が話が圧倒的に早いですし、伝言ゲームにならない分、正確ですからね。
事務局に責任転嫁する
困ったことに、イソ弁の中には事務局へ責任転嫁するタイプの人もいます。
例えば、私の経験でも、事務局が一般論として答えた話を個別具体的な話にすり替え、ボス弁に確認しないまま仕事を進めたイソ弁がいました。
結果、ミスに繋がると「事務局がこう言ったから」と責任転嫁してきました。
あるいは、事務局が答えないから仕事が遅くなったと、逆ギレのようなことを言うイソ弁もいます。
こういう事態のリスクヘッジとして、私は予めボス弁護士に方針を伝えるようにしています。
イソ弁先生から法的判断を含むような質問をされた場合、いくら経験上予想ができたとしても、私は答えませんので。
ボスへの確認も基本的にイソ弁先生から直接してもらいますね。
また、イソ弁から答えられない質問があまりにも多い場合には、ボス弁へ困っていると報告することもあります。
このように言うと、少し告げ口のようで気が引ける人もいるかもしれません。
しかし、謂れのないことで責任転嫁され、怒られたり注意されるのはイヤですよね?
こういった対策も自分を守るためには必要です。
まとめ
イソ弁がボス弁に確認すべき内容を事務局に質問してきた場合の対処のポイントは次の通りです。
いかがでしょうか。
私は、法律事務所に20年勤務してきて、イソ弁とうまく付き合うための一番のキモは「距離感」だと感じています。
何でも無条件に仕事を引き受けたり、フォローすることはお互いのためになりません。
その時はよくても、後から必ず問題になったり、軋轢のタネになります。
ある程度の線引きをして、それを越える場合には毅然とした対応をする方が、結果的にお互いが配慮して気持ちよく仕事ができると実感しています。
この記事がイソ弁から法的判断を含むような質問をされて困っているあなたの参考になれば幸いです。
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