この記事では、法律事務所の事務員が苦手意識のある電話対応について、誰でもすぐにできる改善策と、やってしまいがちなNG例をご紹介しています。
私はこれまで、複数の法律事務所での勤務経験があります。
それぞれの事務所では、単なる先輩事務員としてだけでなく、指導係や監督する立場でたくさんの新人事務員と一緒に仕事をしてきました。
その経験上、ここ数年の新人事務員が特に苦手としていると感じる業務があります。
それが電話対応業務であり、実際に多くの相談にものってきました。
そこで今回は、法律事務所の新人事務員が明日からでもできる電話対応策についてご紹介します。
固定電話が苦手な若い世代の新人法律事務職員
電話が鳴るのが怖いんです
このように、法律事務所に限らず一般的な企業においても、今の新社会人にとって、固定電話は恐怖の対象だと言われています。
自分の携帯電話でメールやLINEをすることは、まったく問題の無いのでしょう。
しかし、固定電話となると、出るのもかけるのも勇気がいると感じている新人事務員は少なくありません。
固定電話に馴染みのない世代
メールやLINEと電話の大きな違いは、メール等は返事を考える時間のあるのに対し、電話では即時の対応が求められる点でしょう。
この世代は、小さい頃から携帯電話が身近にあった世代です。
その反面、かかってきた固定電話に出る機会も、固定電話から電話をかけること自体も少なかった世代ですね。
携帯電話の無かった時代に育った世代では、小さい頃から無意識にその訓練ができています。
しかし、今の若い世代にはそのチャンスが無かったのです。
ところが、社会人になって、いきなり実戦で対応しろと言われるのです。
しかもまだ仕事に不慣れで、相手の言っていることがよくわからないとなれば、恐怖を感じるのも無理のない話ですよね。
法律事務所への電話は多種多様で繊細
法律事務所にかかってくる電話は、依頼者や相手方代理人、裁判所をはじめとした公的機関、弁護士会など、非常に多種多様です。
また、依頼者と一口に言っても、ひとまとめにはできません。
- 離婚訴訟を依頼しているシングルマザー
- 顧問先大企業の年配の社長
- 遺言作成を依頼している高齢女性
- 売掛金回収を依頼している会社の男性担当者
このように、その立場も話す内容もかなり違いますよね。
大規模な法律事務所であれば、事務局もある程度分業化されているので担当に繋げばいいですが、小規模な事務所では、担当でなくても対応せざるを得ません。
そうなれば、自分が知らない・把握していない話も多くなります。
仮に知っていても、話していい相手、話していいタイミング等、繊細な内容もあるかもしれません。
いつ、誰からどんな内容の電話かもわからないのに、臨機応変に対応するなんて無理だわ
まして、経験の少ない新人事務員であればなおさらでしょう。
新人の法律事務職員でも明日からできる対応策
法律事務所での電話対応は、経験値の要素が大きいので、新人のうちから完璧にこなすというのは無理があります。
しかし、完璧とは言えないまでも、新人事務員でも明日からでも試せる対応策があるのです。
シドロモドロになるのは「うまく」答えたいと思うから
私がこれまで指導してきた新人事務員の中に、特に電話に苦手意識がある人がいました。
彼女は電話に出るとすぐにシドロモドロになってしまうのです。
一生懸命、電話口で奮闘しているのはわかるのですが、相手との意思疎通もできず、話が噛み合いません。
そして、結局相手が何を伝えたかったのかという話の内容すら、把握できないこともありました。
彼女は、頑張れば頑張るほどにシドロモドロになり空回りしていたのですが、それは「うまく」答えようとしていたからです。
「うまく」答えるというのは、電話の内容に対して「その場で最適解を答える」ということ。
自分が把握していないわからない話なのに、100%正しい答えを言わないといけないと思うから、シドロモドロになるのです。
電話ですぐに最適解を答えるには経験値が必要
電話をかけてきた人の話に対して、その場で最適解を答えるには、どうしても経験が必要です。
頭をフル回転させても、経験の少ない新人事務員に最適解をその場で導き出すのは至難の業です。
それにもかかわらず、最適解を電話をしながら考えるとキャパオーバーになり、頭は真っ白になって落ち着いて話すことはできません。
何の話かわらないけどちゃんと答えなくちゃ。
えーっと、これがあれだから…、あれ、いま何と仰った?
考えてたら聞き逃しちゃった…どうしよう。
そのような状態では、相手の話を正確に聞き取ることすらできません。
どんどん相手と話が噛み合わなくなっていくのです。
電話の内容が、自分にはわからない内容かどうかはわかるでしょうから、その場合には自分が最適解を答えないといけないという意識は捨てましょう。
新人事務員が電話で即答しなければならない場面はほぼ無い
意外かもしれませんが、法律事務所にかかってきた電話に対し、事務員がその場で即答しなければならない場面は少ないのです。
重要かつ急ぎの案件であれば、弁護士や先輩事務員に任せればいい話です。
新人事務員がその場で即答しなければならない状況はほとんどありません。
むしろ、重要であればあるほど、経験の少ない新人事務員が確信のないまま答える方が危険ですから、そういう意味においても、その場であなたが最適解を出す必要はありません。
「確認します」は魔法の言葉
最適解は答えなくてよくても、黙ってるわけにもいきません。
どのようにすればいいのでしょうか?
まず、電話対応で確実にしなければならないのは、誰からどのような内容の話だったかを正確に聞き取ることです。
新人事務員の間は、これだけでもかなり大変かもしれません。
ですから、復唱しながら、確実に電話相手の話を聞き取ることに専念しましょう。
そして、聞き取った後には次のように言えばいいのです。
ヤマダ様のお話は承りました。
弁護士に確認して、後ほどご連絡させていただきます。
これは一番シンプルな例です。
もし、電話の冒頭で自分には答えられない話だとはっきりわかっていれば、予め次のように伝えて相手に了承してもらってもいいでしょう。
申し訳ありませんが、その件についてはこのお電話で即答はしかねます。
弁護士に確認してからのお返事になりますが、ひとまず私がお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?
ポイントは、まずは「確認する」ということ、確認後に「どのように対応予定か」を伝えることです。
電話の相手によっては「お前が答えろ」と言う人も稀にいますが、その場合にも即答する必要はありません。
申し訳ありませんが、私は事務員ですので、この件は弁護士に確認してからでなければお答えできません。
そう、私達はあくまで事務員です。
「言い訳」と捉えられようが、堂々と「答える立場にない」と言っても何ら差し支えありません。
新人事務員がやりがちな電話対応のNG
過去20年の法律事務所勤務経験で、私から見て新人事務員がやりがちな電話対応のNGがあります。
その中でも、意識だけで比較的簡単に改められるものをご紹介しましょう。
「わからない」と言ってしまう
新人事務員の中には、自分が答えられない電話に対して「わかりません」と相手に正直に言ってしまう人がいますが、これは悪手と言わざるを得ません。
先程の「確認する」と対応するのとは何が違うのですか?
わからないから確認するのですよね?
考えてみて欲しいのですが、仮にあなたが依頼者だとします。
自分がお金を払って依頼している法律事務所へ、自分が依頼している内容について聞きたいことがあり、電話したとします。
しかし、電話に出た事務員に、ただ「わかりません」と言われたらどんな気持ちになるでしょう。
少しはムッとしませんか?
法律事務所に限らず、問い合わせの窓口として電話が設置されているのです。
電話をかける側は何らかの回答や対応を求めているわけで、「わからない」という言葉は聞きたくないのです。
また、「わかりません」と伝えるだけでは、ある種シャットアウトされたような印象を与えがちです。
ですから、「わからない」という言葉は使わずに、自分には答えられないけれど「確認する」、その上で「どのように対応予定か」答える必要があるのです。
このように、ちょっとした言葉の違いですが、受ける印象はかなり違います。
語尾を伸ばした話し方
そうですねぇ〜、相手方がぁ〜、そう言ってますからぁ〜…
これは比較的若い事務員によく見られる光景ですが、語尾を伸ばした話し方をする人がいます。
はっきり言って、これは非常に損をする話し方です。
こういう語尾を伸ばす話し方は、どうしても幼く頼りない印象を与えます。
それだけでなく、理解力が乏しそうな印象を抱かせたり、反対に馬鹿にされていると感じさせる場合もあります。
特に、電話は相手の顔が見えないのでなおさらです。
法律事務所に電話をかけてくる人の中には、非常に感情的になっている人も少なくないので、無駄に刺激することになりかねません。
実際に、私の経験でも、語尾を伸ばす話し方をする若い事務員がいました。
とある顧問先企業の女性管理職は、彼女が電話に出ても、話をしたり伝言を頼まなくなっていきました。
あの子はなんだか頼りなく感じるの。
こっちは大事な話をしているのに、あの話し方はイライラしちゃうしね。
その新人事務員は真面目な子だったにもかかわらず、語尾を伸ばしているだけで評価が下がり、損をしていたのです。
また、案外、自分の話し方は自分ではわかっていないものです。
自覚なく語尾を伸ばしている人もいるので、一度周囲に聞いてみるといいでしょう。
意識して語尾を切るようにすれば、それだけでハキハキしてしっかりした印象を持ってもらえますよ。
まとめ
法律事務所の新人事務員が明日からでもできる電話対応策のポイントは次の通りです。
いかがでしょうか。
何度も言うように、法律事務所での電話対応には経験値が必要です。
新人事務員が、明日からすぐに電話対応で完璧な受け答えをすることは難しいでしょう。
しかし、とりあえずこれさえできれば、相手の話すら聞き取れないような事態は避けられます。
そして、電話の内容をしっかり聞き取り、弁護士や先輩事務員にしっかりと説明して、正しい回答を確認しましょう。
また、中には、確認したくても弁護士に相談できずに悩む人もいるかもしれません。
そういう方を対象に、こちらの記事では、ホウ・レン・ソウ(報告・連絡・相談)についてご紹介していますので、よかったら参考にしてみてくださいね。
>>法律事務所でいつもと同じ処理をしたら怒られた!?リスクを減らし自分を守る1番いい方法は
このように、少しずつ法律事務所での勤務経験を積んでいきましょう。
そうすれば、徐々に答えられることが増えて、あなたの自信にも繋がります。
電話対応がうまくできずに悩んでいる法律事務職員の助けになれば幸いです。
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